「ワインがもっと気軽に楽しめるお酒であることを知って欲しい」
そんな想いで集まった「35歳」という共通点を持つ店主たちが、たった一人の「35歳」に焦点を当て、
暮らしの中に優しく寄り添うワインとの物語を紡いでいくコーナー。
仕事、恋愛、結婚、子育て…第二の人生のスタート地点とも言われる35歳。
酸いも甘いも知り尽くし、良い意味での「諦め」と未来への「可能性」の中で揺れ動く人生のターニングポイントで、
同世代のみんなはどのようなことを感じ、日々を営んでいるんだろう?
私たちと一緒に覗いてみませんか?
※物語は全てフィクションです。
situation03 「守りたいもの」〜ポッジョ レ ヴォルピ ・フラスカーティ スーペリオーレ〜
妻と結婚して8年。
ローンで念願の一軒家を購入し、2人の娘も授かった。
妻とは大学の同級生で、ゼミが同じだったことで意気投合。
恥ずかしくて妻には言ってないが、
生まれて初めて「一生をかけて守っていきたい」と思えた存在だった。
今日は、妻が産まれて35回目の誕生日。
本人はすっかりそのことを忘れているようだったが、
娘たちとサプライズでお祝いをしようと、前々から少しずつ準備を進めてきた。
「今日は俺が夕飯作るから、ゆっくり帰ってきて大丈夫だよ。」
「何、気持ち悪い。浮気でもした?笑」
そう言い返してきた妻の怪訝そうな表情を思い出すと、笑いが込み上げてくる。
この日のために午後休を取ったことも、妻には内緒だ。
テーブルに並ぶのは、娘たちと一緒に作った料理とケーキ。
見た目は……まぁ、気持ちがこもっているから良しとしよう。
娘を寝かしつけたあと、2人で飲む用のワインはキッチンに隠しておいた。
ポッジョ レ ヴォルピ ・フラスカーティ スーペリオーレという白ワイン。
妻は覚えていないかもしれないが、
プロポーズしたときに一緒にバーで飲んだ、思い出のワインだ。
ラベルのデザインをたよりに、ネットで探してこの日に合わせて購入した。
値段はお手頃なのに、味はたしかだとワイン好きの中でも人気なんだとか。
あまり高いワインだったら後から怒られるだろうし(笑)、即決だった。
「ただいまー!」
妻の声が家中に響き渡る。
妻は一体どんな顔をするだろうか。
「せーの…ママ〜!おめでとうー!!!」
何気ない幸せを、この日常をありがとう。
今までも、これからも、君を、そして娘たちをこの手で守っていくと誓います。
……普段は恥ずかしくて言えないけど、ワインで酔ったら、直接伝えられるかな。
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▼ポッジョ レ ヴォルピ ・フラスカーティ スーペリオーレ▼