#ワインと私のショートストーリー vol.4

「ワインがもっと気軽に楽しめるお酒であることを知って欲しい」

そんな想いで集まった「35歳」という共通点を持つ店主たちが、たった一人の「35歳」に焦点を当て、

暮らしの中に優しく寄り添うワインとの物語を紡いでいくコーナー。

仕事、恋愛、結婚、子育て…第二の人生のスタート地点とも言われる35歳。

酸いも甘いも知り尽くし、良い意味での「諦め」と未来への「可能性」の中で揺れ動く人生のターニングポイントで、

同世代のみんなはどのようなことを感じ、日々を営んでいるんだろう?

私たちと一緒に覗いてみませんか?

※物語は全てフィクションです。

 


 

situation04 「守りたいもの〜another story〜妻編」ポッジョ レ ヴォルピ ・フラスカーティ スーペリオーレ

 

私の夫は、お世辞抜きで「いい奴」だ。

 

周りの人からの信頼も厚いし、育児にも積極的。

 

「妻には本当に、頭が上がらないんですよね。」

 

これが夫の口癖で、私に対していつも腰が低い。

 

思ったことをズバッと言って周りに敵を作りやすい私にとって、

誰とでも分け隔てなく付き合える夫は、まさに正反対の生き物。

 

彼がいることでどんなときでも強くなれたし、

仕事で辛いことがあっても

彼が家で待ってくれていると思ったら頑張れた。

 

「頭が上がらないのは、私のほうね……」

 

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そういえば今朝、ちょっと変だった。

「夕飯は俺が作る」って言ってたな……

まさか、やましいことでもした埋め合わせのつもり…?笑

 

「あ〜、すっかり遅くなっちゃった!」

 

いつもより薄暗くなった街を通り抜け、

夫や娘たちの笑顔を想像しながら家路を急いだ。

 

「ただいまー!」

 

「せーの…ママ〜!おめでとうー!!!」

 

おめでとう……?

目の前に舞うカラフルな紙切れと娘たちの笑顔を見て、

一瞬頭が真っ白になった。

 

「今日は、私の誕生日か!」

 

テーブルの上には夫と娘たちが作ってくれた料理やケーキ。

盛り付けが残念だったり、形がいびつだったりするけど

それがまた妙に可愛くて、嬉しさが倍増した。

 

35歳の誕生日。

そろそろ歳を重ねるのがしんどくなってきたが、

今日が永遠に続いて欲しいと思えるくらい、

生きてきた中で一番幸せな時間を過ごすことができた。

 

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子供たちを寝かしつけた後、

夫が恥ずかしそうに笑いながら1本のワインを持ってきた。

 

「ねぇ、これってあのときの……?」

 

夫が私にプロポーズしてくれたときにたまたま飲んでいた

ポッジョ レ ヴォルピ ・フラスカーティ スーペリオーレという白ワインだ。

 

バーのマスターがプロポーズのお祝いに写真を撮ってくれたもんだから、

ラベルのデザインをよく覚えていた。

 

その夜は、久しぶりに2人で遅くまで飲んだ。

子供が産まれてこんなにも遅くまで飲んだのは初めてだ。

 

この歳になって恥ずかしいけど、

私はもう一度、夫に恋をしてしまっているのかもしれない。

 

あなたとなら、おじいちゃん、おばあちゃんになっても

ずっと笑って楽しく過ごせると思えるの。

 

……ワインで酔ったら、この気持ちを直接伝えられるかな。

お願い、まだ「寝よう」なんて言わないで。

今日はもう少し、あなたの笑顔を見ていたいの。

 

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▼ポッジョ レ ヴォルピ ・フラスカーティ スーペリオーレ▼

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